OpenClawの初期体験を前回記した。SlackやLINEの中にAIが入り込んでくる感覚、ChatGPTとは根本的に異なるアーキテクチャの衝撃——あの感覚を確認した後、当然「実際どう入れるのか」という問いに向き合うことになる。今回はMac mini(M4)での導入プロセスと、そこで直面した最初の設計判断について整理する。
OpenClawの正体:脳みそではなく「胴体」
まず理解しておくべきことがある。OpenClawそのものは「賢いAI」ではない。GPTやGeminiといったLLMにつながるハブ(胴体)だ。どの脳みそ(LLM)を使うか、どの特技(スキル)をどこまで許可するかは、すべて使う側が設計する。この点を最初に把握していないと、選択肢の多さに圧倒されて先に進めなくなる。
npmを使ったインストール自体はわりとスムーズだった。問題はその後だ。「とりあえず動かす」だけなら簡単だが、ちゃんと使おうとするとどのモデルをどの用途に使うかという設計が早い段階で必要になってくる。
最初の方針:スキルは「何も追加しない」から始める
OpenClawはSlack・Gmail・ブラウザ操作など、外部への手を段階的に伸ばせる。しかし、仕組みをよく理解しないまま権限を広げるのが一番危ない。そこで最初の方針として、スキルを一切追加しない状態からスタートした。まず最低限の動作確認を優先し、スキル追加は検証が進んでから——この順番は、どんな複雑なシステムを導入する際にも有効な原則だと思っている。
LLMは「1つ」ではなかった
OpenAI OAuthでChatGPT Codex 5.2を会話用のモデルとして選んだ。ここまでは素直に進んだ。ところが、使い始めてすぐに重要な気づきがあった。会話用のLLMとメモリーのインデックス化用のLLMは、別々に指定できるのだ。

「インデックス化」とは、蓄積されたメモリー(テキスト記録)をあとから検索・参照できるよう整理する処理のことで、この処理にもLLMが必要になる。最初は「会話用のモデル=全部の処理に使われる」と思っていたが、実際は違う。メモリー処理を別モデルに振れるとわかった段階で、運用設計が一段クリアになった。検証ではインデックス化にGoogle Gemini Flashを使った。軽量で速く、索引化という効率重視の処理に向いている。
メモリーの記録方針は「ペルソナ」に書いておく
OpenClawのメモリーは、ペルソナファイル(mdファイル)で管理される。このファイルに「何をどう記録するか」という方針を書いておかないと、情報の蓄積が一貫性を欠く。現在は毎朝5時に前日分をまとめてインデックス化する運用にしている。低トラフィックな時間帯に計算負荷を集約するというシンプルな設計だ。
レートリミットという壁、そしてAPIは「別会計」
セットアップが整い、実タスクをお願いしようとした矢先、こんなエラーが出た。run error: ⚠ API rate limit reached。OAuth接続のままブラウザ操作のような重い処理を走らせると、比較的早くこの壁に当たる。


ここで次の選択肢としてAPI直接接続が出てくるが、一点注意が必要だ。ChatGPT Plus(月額サブスク)とOpenAI API(従量課金)は、まったく別の料金体系である。ChatGPT Plusに入っていても、API経由の利用には別途クレジットが必要になる。初期クレジットとして$5分を購入し、予期しない高額課金を防ぐため自動補充はオフに設定した。万一意図せずクレジットを大量消費しても、自動的に追加費用が発生しない状態を確保してから先に進むのが安全だ。
次回:Slack連携とブラウザ操作の話
今回はMac miniへの導入から、LLMの複数設計、メモリー管理、レートリミットとAPI接続の判断まで整理した。次回は、ここからもう一段踏み込んで、Slackに実際につないだときに何が起きたか、ブラウザ操作をどこまで任せられるかを実体験ベースで書く。シリコンバレーで起きているAIトレンドの最前線を、引き続きSilicon Valley Japan Labからお届けする。
藤本 真也 — カーネギーメロン大学にてECE(電気・コンピュータ工学)とコンピュータサイエンスを修了後、LSIロジックにて半導体設計エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、デザイン雑貨の米国展開(MoMAを含む600店舗超)、日本食レストランのカリフォルニア進出、大手保険グループのDX推進など、業界を跨いだ起業・経営を日米両市場で実践してきた。2025年、Silicon Valley Japan Labを設立。シリコンバレーの最前線を日本へ、日本のポテンシャルを米国へ届けるリサーチ・コンサルティングを行っている。

English